音楽を作り上げていく中で、よく言われる言葉があります。
「共感されるものを作らなければいけない」と。
作詞にしても、作曲にしても、「共感」を得られなければヒットしない、
なんて言われています。
ある意味、「個性」よりも「共感」が大事だということですね。
いくら「個性」があっても「共感」されなければ個性でななく、単なる「アク」
になってしまう。
だから物作りにおいて何よりも大切なのが「共感」だというのです。
たしかに、この考えは一理あります。
しかし、本当に「共感」を得ることに重きを置いていいのでしょうか?
僕は違うと考えています。
これは、作詞講座の中でもお話ししているのですが、
最初から共感を目指しても意味が無いんです。
「共感」は結果的に得られればいいんです。
あなたが表現したいもの、それを創り上げる。
それに共感してくれる人がいるかもしれないし、いないかもしれない。
でも、それでいいんです。
商業音楽に詳しい、自称プロと言っている者ほど、
この、「共感」という言葉を口にします。
「共感」が大事なんだと、それがプロに必須の能力なんだと言わんばかりにです。
その結果、日本の音楽業界がどうなったかというと、
一つヒットが出ると、必ず2匹目のドジョウを探します。
いや、2匹目どころか、
柳の下にドジョウは30匹ぐらいいるとでも思ってるような事をしています(苦笑)
これが彼らの言う「共感」ですか?
しかも、彼らは自らをアーティストと呼び、周りも彼らをアーティストと紹介します。
アーティストと呼ばれる者が、一番大事なのは「共感」だという。
何か矛盾していませんか。
百歩譲って、
いくらアーティストだと言っても、売り上げを考えなければいけないから
「共感」が大事なんだ、という言い分も確かにあるでしょう。
商業音楽なんだから、ビジネスなんだからしょうがないんだと。
それでは、そういう人達にもっとショックなお話しを(笑)
ビジネスの世界において、本当のヒット商品は、
マーケティングのリサーチからは生まれてこない、ということを。
これは、僕が唯一ビジネス系メルマガで読み続けている木坂氏の言葉。
あまりにも今回の話に共通する部分が多いので、彼の言葉を取り上げてみます。
ビジネスの世界では顧客のニーズを探るために、「リサーチ」ということをします。
どんなニーズがあるんだろう?
商品の感想は?
何が求められているんだろう?
こう言ったことをリサーチして商品開発に結びつけていく、
これが今の主流のマーケティング法(マーケットインというそうです)
これって言わば音楽で言えば、
共感を得るために、市場のニーズを探っている、今の音楽業界が取っているもの
と同じもの。
「共感」を得るための曲作り、「共感」を得られるシンガーの発掘。
「共感」が大事だ、という今の業界人が言う方法とまさしく同じです。
このマーケットイン、確かに現在主流ではありますが、
面白いことに、そのマーケットインからは本当のヒット商品が出にくいとか。
アンケートやリサーチを重要視した製品作りは、
以下、木坂氏の言葉ですが
「オリジナル性のかけらもないつまらない商品が大量に生み出される結果となっ
た。」
ということなんです。
まるでビジネスの話しでなく、音楽の話しをしているのかと思うような内容ですね(笑)
ビジネスにおいて、本当のヒット商品は、プロダクトアウトと言われる方法で開発された物。
要するに顧客のニーズなどを探ったリサーチから生まれるのではなく、
独創的なアイデアで、「これが顧客に必要なんだ!」という作り手側の意志から生まれている。
ということだと思います。
音楽も全く同じでしょう。
共感なんか気にせず、自分の表現したいもののみを考えて作る。
作っている段階で「共感」なんか考えない
それこそが大事です。
今の音楽業界のCD販売の大幅な低下。
それをネットのせいだけにしている、音楽関係者各位。
「共感」を目指すだけで、
本当の意味で人の心に響く曲を創り上げることが出来るのですか?
声を大にして聴いてみたいですね。
一つ余談ですが、
マーケティングリサーチだとか、顧客満足度だとかをビジネスの世界で特に言われ出したのは
20年くらい前からだと思います。
僕がいた自動車業界でも、非常に顧客満足度と言うことが重要視され、
どこのメーカーもお客さんのニーズを言うようになりました。
特にその頃からですね、急速に自動車がつまらないものになったのは。
僕はこれでも、かなりの自動車好きでした。
でした、というのは今はもう殆ど自動車に興味が無くなってしまったから。
あれほど、頭が痛くなるくらい、毎日クルマの事ばかり考えていた時代があるのに、
今は全く考えません。
それはこの20年で、自動車が本当につまらなくなったから、
という理由が大きいです。
ドイツにメルセデスという自動車メーカーがあります。
そう、ベンツですね。
この、メルセデスベンツというメーカー
ほとんどの自動車メーカーがカスタマー(顧客)という言葉を口にするようになっても、
カスタマーという言葉を口にしませんでした。
それが、10数年前、新型Eクラスの発表の時に、はじめてカスタマーと言う言葉を口にします。
「お客様のニーズ」
この言葉を聞いたときにジャーナリスト達は大変驚きました。
それまでのメルセデスは一切カスタマーという言葉を使わずに
自分たちの作る車こそが最高で、当然お客さんにとっても、それが最上の自動車
を提供することになる。
そういって憚らなかったからです。
そこからメルセデスは大きく方向転換しました。
もちろん、その選択はメーカーとして間違ったものではありません。
今でも利益を出し続けているのですから。
ですが、僕はやはりそれまでのメルセデスが好きです。
結局、多くの自動車メーカーが、
僕にとって魅力の感じないクルマ造りになってしまい
ぼくも、クルマに対する興味を失います。
と、すいません、ずいぶん長い余談ですが(汗)
何が言いたいかというと、あなたには最初から「共感」なんて求めず、
自分にしかできない音楽、自分にしか作り出せない音楽、
それを目指してほしいんです。
それが、いい音楽を作るという方向に必ず繋がりますし、
また、結果的に、より多くの「共感」を得ることに繋がるからです。
ソニーのウォークマン、たまごっち、
多くのヒット商品は独創的なアイデアから生まれ、
その結果信じられないくらいの共感を得ているではないですか。
また、世界の名曲の数々、
それが最初から「共感」を目指して作られたとはとても思えません。
ジョンレノンのイマジンが、
共感を目指して作られたから、あれだけ人の心に突き刺さる、
なんてことは、考えられないんです。
イマジンへの多大なる共感は結果的に生まれたものなんです。
この「共感」の話し、
結構重要なことなんで、いつかお話ししたいと思ってました。
なんにせよ、
「共感」が必要、というのは、
音楽のノウハウを本などを提供している、所謂プロという人でも言っています。
が、もしあなたの前に、本気でそんなことを言う人がいたら、
その人の言葉、疑ってかかった方がいいかもしれませんよ(笑)
殆どの言葉が、誰かの受け売り、
その可能性が大きいですから。
と、もう少しお話ししたいこともあるんですが、
今日はここまでとしましょう。
もしかしたら次回、続きを話すかもしれません。
PS
2匹目のドジョウの話しですが、
椎名林檎がデビューしたあとに、同じようなシンガーが次から次へと出てきましたね。
その中で残っているのがどれくらいいるでしょうか?
「共感」が大事と、同じようなシンガーをデビューさせても結果的にはその場限り。
まあ、短期で儲けた方はそれでいいのかもしれませんが、
それでデビューする方にしては結構たまりませんね。
PPS
今後、僕らミュージシャンにとって、この「共感」の部分、
もっと違う角度で考えると、
インディーズミュージシャンにとって非常に面白い、
活動に繋がると思います。
もちろん結果的に共感を得る、というスタンスに変わりはないんですが
その「共感」を得られる場所をどこに求めるか?
それがこれからの我々インディーズミュージシャンが
一番考える必要があるところだと思います。
この辺のお話しはまた日を改めてしようと思います。





















